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MWF:仮説と検証

ひとびとはメイルのよみかきしかしない?!

Whittaker ら [Whi 96] が "email overload" について書いてからすでに 10 年になる [Fis 06]. "Email overload" とは,E メイルが単に他者との非同期的なテキスト・メッセージの交換につかわれるだけでなく,仕事 (task) の管理や個人的な情報の蓄積・ファイリングなどのさまざまな目的につかわれることをいう. この論文はかなりのインパクトをあたえたようにみえる. しかし,それにもかかわらず,それがでてからもメイル・システムやそのユーザインタフェースがあまり変化していない. また,それ以降おこなわれてきた研究もそれらを本質的に改革するものになっていないようにおもわれる.

上記の論文がでて以来,さまざまな分析がおこなわれ [Duc 01],またメイル・クライアントや他のプログラムによってこのようなさまざまな仕事を支援しようとするこころみが多数おこなわれてきた (たとえば [Ven 03] [Kap 03]). これらの,あたらしいメイルのためのインタフェースやメイルツールの開発のほとんどに共通しているのは,メイルがいままでどおりのしくみで送受信され,そこにあたらしい操作やしくみを導入しようとはしていないことである. そのかわり,おおくの研究ではテキスト解析 (自然言語処理) という,あやふやな技術をつかっている. たとえば,メイルによる会話のながれ (スレッド) をもとめるのにテキスト解析をつかっている.

たしかに,あたらしいインタフェースやツールを導入したために従来のしくみがつかえなくなってしまうとしたら,つまり従来のメイル・システムやメイル・クライアントとの相互運用性がなくなってしまうとしたら,メイルの本来の目的が達せられなくなる. したがって,そのようなインタフェースやツールはつかわれないだろう. しかし,相互運用性が確保されれば,あたらしいしくみを導入してもよいのではないだろうか? たとえば,ひとびとがワークフロー・システムをつかうかわりにそれをメイル・システムによって代用してしまうとしても,それはかならずしもメイル・システムのなかにワークフローをとりいれることが支持されないということを意味しているわけではない. このような方向の研究がなされてしかるべきだとかんがえられる.

参考文献

  • [Whi 96] Whittaker, S. and Sidner, C., “Email Overload: Exploring Personal Information Management of Email”, CHI '96, 1996.
  • [Fis 06] Fisher, D., Brush, A. J., Gleave, E., and Smith, M. A.,“Revisiting Whittaker & Sidner's “Email Overload” Ten Years Later”, ACM CSCW '06, pp. 309-312, 2006.
  • [Duc 01] Ducheneaut, N. and Bellotti, V., “E-mail as Habitat”, ACM Interactions, September-October 2001, pp. 30-38, 2001.
  • [Ven 03] Venolia, G. D. and Neustaedter, C., “Understanding Sequence and Reply Relationships within Email Conversations: A Mixed-Model Visualization”, CHI 2003, pp. 361-368, 2003.
  • [Kap 03] Kaptelinin, V., “UMEA: Translating Interaction Histories into Project Contexts”, CHI 2003, pp. 353-360, 2003.

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2007-05-04 01:00 に投稿されたエントリーのページです.

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